アリックスパートナーズ、小売り業界展望レポートを発表 Eコマースとオムニチャネルの成長トレンド

- マーケットプレイスやライブストリーミング・ソーシャル・セリングといった新しい売り方が牽引する形でEコマース市場が拡大している
- さらに、Eコマースと実店舗を組み合わせたオムニチャネルの重要性が増しているが、多くの小売業界の経営者はオムニチャネルの真のコストとベネフィットを考慮していない

東京, 2021年9月1日 - (JCN Newswire) - グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズは、小売り業界におけるEコマースおよびオムニチャネルについてのレポートを発表しました。

ネットショッピング利用世帯の急増を背景に、小売業者はEコマースのインフラを整備すべく投資を拡大しています。Eコマース市場拡大の背景にはマーケットプレイスの成長とライブストリーミング・ソーシャル・セリング等の新しい売り方の台頭があります。デジタル・マーケットプレイスは新型コロナウイルス感染拡大を背景にとりわけ大きく伸長しています。例えば、アマゾンのマーケットプレイスにおいては2020年10-12月の販売高は前年比112%増となっており、直販の46%増を大幅に上回っています[1]。

ソーシャルセリングの台頭も目覚ましく、特に、中国における顧客との接点にインタラクティブ性を持たせるライブストリーミング・ソーシャル・セリングは、今後、世界が注目すべきビジネス・モデルになりつつあります。検索性や製品の発見が差別化要因になるにつれ、あらゆるデータソースを1つの分析システムに接続することで消費者に関する有用なインサイトを抽出することが可能となります。中国ではライブストリーミング中に購入された商品の返品率は通常のEコマースと比較し50%減、売上は2020年に1,250億米ドルに上り2019年と比較し89%増の大幅成長を遂げています[2]。

その一方で実店舗への投資が犠牲になっています。米国では今年末までに約1万の店舗が閉鎖に追い込まれると見込まれています。Eコマースが今後も継続的に拡大していくことは明白ですが、同時に店舗の閉鎖は必ずしも正しい選択ではありません。アリックスパートナーズでは、リアル(実店舗)とネット(インターネット通販)の双方で購買するオムニチャネル顧客が実は最も大きな価値をもたらすとみています。したがって、閉鎖する店舗の選別を誤ると小売業者に大きな損失をもたらすことになります。

小売業者は伝統的に業績の低い店舗から閉鎖してきました。しかし、この手法を採用すると、他の重要な指標を見落としがちになります。アリックスパートナーズの調査によると、84%の小売業界の経営幹部が、オムニチャネルの真のコストとベネフィットを考慮していないことが明らかになっています。実店舗をオムニチャネルビジネスの不可欠な要素として活用するために考慮すべきポイントは以下のとおりです。

●顧客のパーソナライズ化とデータ:実店舗では自社ブランドのクレジットカードやロイヤリティ・サインアップが販売を牽引する重要な要素となっています。店舗を閉鎖してしまうと、小売業者はこうした顧客とのタッチポイントから収集できる貴重なデータを失う可能性があります。

●顧客獲得とリテンション:顧客を獲得することにおいては、実店舗は巨大広告やマーケティング・プロキシに匹敵する効果的な装置です。さらに、複数のチャネルで買い物をする顧客は通常最もロイヤリティが高く、実店舗のみで購入する顧客の約1.8倍の購買力があります。オンラインで購入した製品を店舗で返品する場合は、最大40%がその店舗での次の購入につながることもわかっています。

●市場競争とダイナミクス:実店舗がなくなった場合、これまで店舗を訪れていた顧客が必ずしもオンラインに購入の場を移すとは限りません。店舗が閉店された場合、顧客はその地域にある競合店舗に買い物の場を移す可能性もあります。

実店舗の利益算出においてメリットを評価しない小売業者は不必要に店舗を閉鎖してしまい、その結果、収益の大幅減少を招いてしまいます。デジタル・ファーストモデルに移行していたある小売業者は、店舗の半分を閉鎖することを決定し、その結果、ほぼ90%の顧客を失いました。小売業者がチャネルシフトの将来を評価するとき、オムニチャネルネットワークを正しくすることは非常に重要です。

アリックスパートナーズが実施した調査によると、パンデミック後とパンデミック前を比較して、オンラインでの買い物を増やす予定がないと考える消費者の割合は91%となっています[3]。中でも、フットウェアは店舗での購入が好まれる消費財の一つで、フットウェア消費者のうち、パンデミック後の買い物の主要チャネルは店舗であると回答したのは59%[4]と、Eコマースが普及する昨今も消費者の店舗での購入意向が根強いことがわかります。

アリックスパートナーズのシニア・ヴァイス・プレジデントである魚谷洋輔は次のように述べています。「多くのブランドや新たなプラットフォームが小売業者の定義を変え、コンテンツとコマースを融合させてシェアを獲得する傾向にあります。パンデミック以降は特に、カスタマー・エクスペリエンスを重視したマーケットプレイスやライブストリーミング・ソーシャル・セリングといった新しい売り方が小売市場をけん引する傾向にあります。オムニチャネルも今後注目すべきビジネス・モデルですが、既存の実店舗ネットワークへの目配りも怠るべきではありません。店舗閉鎖は時に正しい前進となりえますが、これは慎重に考えられた上での選択であるべきで、急いで行うべきではありません」。

[1] AlixPartners "Retail Viewpoint: Are marketplaces the right trick to get more treats?", Amazon 10-Q/Ks
[2] AlixPartners Retail Viewpoint: What can retailers learn about social selling from China? https://bit.ly/3gISBTN
[3] AlixPartners Changing Consumer Priorities Study, March 2021
[4] AlixPartners US Footwear Consumer Survey, February 2021

アリックスパートナーズについて

1981年設立。ニューヨークに本社を構える結果重視型のグローバルコンサルティング会社。企業再生案件や緊急性が高く複雑な課題の解決支援を強みとしている。民間企業に加え、法律事務所、投資銀行、プライベートエクイティなど多岐にわたるクライアントを持つ。世界20都市に事務所を展開。日本オフィスの設立は2005年。日本語ウェッブサイトは https://www.alixpartners.com/jp/