TOKYO, Jun 22, 2022 - (JCN Newswire) -  エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役 CEO:内藤晴夫)は、このたび、早期アルツハイマー病(AD)当事者様に対する抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品コード:BAN2401)の潜在的な経済価値について、米国における医療費支払者観点および社会的観点から、検証済の疾患シミュレーション・モデル(AD Archimedes Condition Event simulation:AD ACE モデル 1,2,3)を用いて推定した初期段階の評価結果が査読学術専門誌Neurology and Therapy 誌に掲載されたことをお知らせします。

本論文は、2022 年 4 月に同誌に公表したレカネマブの長期的健康アウトカムの評価 4 に次いでの第二報となります。医療費支払者観点では直接的なケアコスト(外来・入院サービス、介護・在宅医療・サービス、レカネマブの薬剤費を除く投薬、その他介入コストなど)に焦点を当てているのに対し、社会的観点では追加で社会的コスト(家族介護によるインフォーマル・ケアコストおよび生産性損失)を考慮しています(以下、社会的観点に基づく評価)。既報の通り、標準治療*(SoC:standard of care)に加えレカネマブ投与を行った群(レカネマブ群)では、SoC 群と比較して、疾患の進行がベースラインから軽度へは平均 2.51 年、中等度へは 3.13 年、高度へは 2.34 年遅くなる可能性があります 4。本シミュレーションの予備的な結果として、質調整生存年**(QALY:Qualityadjusted life years)が延長するとともに、直接的なケアコストおよびインフォーマルな社会的コストを低減する可能性が示唆されました。さらに、今回用いた AD ACE モデルの枠組みにより、当事者様サブセット、複数の治療中止ルール***、潜在的な投与レジメ、主要な不確実性要因による影響を含む様々なシナリオや感度分析において、レカネマブの潜在的価値を評価することが可能となりました。

当社がレカネマブを脳内にアミロイド病変が確認された早期 AD 当事者様にお届けすることをめざす上で信頼を確立することが重要であり、そのためにも、このような臨床的・社会経済学的分析を行い、公表してまいります。したがって、このたびの論文公表は、レカネマブの潜在的な臨床的・社会経済的価値に関するステークホルダーズの皆様のご議論のための共通基盤を社会的な観点から提供することを企図しているものであり、現時点でレカネマブの価格を設定することを意図するものではありません。

本シミュレーションは、アミロイド病理を有する早期 AD 当事者様に対するレカネマブの有効性と安全性を評価した臨床第IIb 相試験(201 試験)の結果と公表された論文を用いて実施されました。アミロイド病理を有する早期 AD 当事者様において、レカネマブ群は SoC 群と比較して、医療費支払者観点では 0.61 QALYs の増加と 8,707 ドルの総費用(レカネマブの薬剤費を除く)の減少(社会的観点に基づく評価:0.64 QALYs 増加、11,214 ドル減少)をもたらすと予測されました。また、ICER****(Institute for Clinical and Economic Review)が推奨する 1 QALY 獲得あたり 5 万ドルから 20 万ドルの幅広い支払意思額(willingness to pay)を用いて、レカネマブ群の潜在的な経済価値について複数の推定を行いました。その結果、米国医療制度下におけるレカネマブの潜在的な価値に基づく価格(VBP:value-based price)は、年間 9,249
ドル~35,605 ドル(社会的観点:10,400 ドル~38,053 ドル)と試算されました。なお、ICERの価値フレームワーク 5 においては、価値は臨床的効果や直接的なケアコストを基にした費用対効果の指標のみでは導き出すことはできないため、長期的な価値を評価する際には、様々な考慮すべき社会的な要因等によるベネフィットと不利益も価値フレームワークに加えて評価します。特に、社会的負担が直接医療費に比べて大きく、治療法がこれらの費用に与える影響が大きい場合には、幅広い支払意思額の閾値範囲の高い方がより適切であるとしており 5、レカネマブにはその高い閾値範囲が適用される可能性があると考えています。

AD 当事者様の多くは、そのご家族や友人からインフォーマルなケアを受けています。2021年に米国では、その無報酬の介護の総時間数は 160 億時間以上、費用は 2,716 億ドルに相当するとされています 6。今回の予測およびシミュレーションの結果は、レカネマブによる早期治療がこれらのコストと経済的な負担を軽減する可能性があることを示唆しています。これは、医療の意思決定者がレカネマブの潜在的な臨床的・社会経済的価値を理解する際の参考となると考えています。検証第III相 Clarity AD 試験から間もなく得られる知見を、このモデルにインプットすることにより、今回の知見をさらに精査する予定です。レカネマブが米国食品医薬品局(FDA)から承認された場合、当社は、このモデリングの枠組みに加え、医療システムの持続可能性、当事者様の購入可能な水準などを十分に考慮して、価値に基づく価格を決定して行くこととなります。

エーザイ株式会社の常務執行役であり、ニューロロジービジネスグループ プレジデント兼グローバル AD オフィサーである Ivan Cheung は、「当社の目標は、抗 Aβプロトフィブリル抗体レカネマブなどの治療薬を創出し、AD 当事者様とそのご家族の憂慮の解消に寄与することです。AD においては、医療コストのみならず膨大な社会的コストを考慮した治療法の総体的な価値の評価が重要となります。当社のヒューマンヘルスケア理念、信頼性、透明性に対するコミットメントに基づき、引き続き、レカネマブに関するデータと情報を公表していくとともに、今年の秋にレカネマブの検証第III相 Clarity AD 試験の結果をお知らせすることを楽しみにしています」と述べています。

当社は、FDA の迅速承認制度に基づくレカネマブの早期 AD 治療薬としての生物学的製剤承認申請の段階的申請を 2022 年 5 月に完了しました。レカネマブの早期 AD を対象とした臨床第III相試験(Clarity AD)が進行中であり、2021 年 3 月に 1,795 人の被験者登録を完了し、2022年秋に主要評価データを取得する予定です。FDA は、Clarity AD 試験の結果について、レカネマブの臨床的有用性の検証試験として評価することに合意しており、当社は Clarity AD試験の結果に応じて、2022 年度中にフル承認申請を行う予定です。日本においては、2022 年 3月、早期の承認取得をめざし、医薬品事前評価相談制度に基づいて独立行政法人医薬医療機器総合機構(PMDA)に対して申請データの提出を開始しており、Clarity AD 試験の試験結果に基づき、2022 年度中の製造販売承認申請を予定しています。欧州においても、Clarity AD 試験の試験結果に基づき、2022 年度中の承認申請を予定しています。

本リリースの詳細は下記をご参照ください。
https://www.eisai.co.jp/news/2022/pdf/news202248pdf.pdf

概要:エーザイ株式会社

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