TOKYO, Apr 7, 2023 - (JCN Newswire) -  日本電気株式会社*1(以下NEC)、エブリセンスジャパン株式会社*2(以下ESJ)、株式会社日立製作所*3(以下日立)、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所*4(以下NII)、株式会社ザイナス*5(以下ザイナス)の5者は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術(管理法人:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO))」において、分野を超えてデータの発見と利用ができる仕組みCADDE (Connector Architecture for decentralized Data Exchange;分散型データ交換のためのコネクタ・アーキテクチャ、読み:ジャッデ)*6のさらなる普及に向けた実証を実施しました。また、CADDEの利用ユースケースや具体的なサービス利用方法を理解するためのドキュメント「外部仕様書」を新たに作成し、3月31日に公開しました。

実証において、CADDEと産業・商業向けデータ基盤、スマートシティ向けデータ基盤などを相互接続したデータ利活用の検証を行い、分野を超えたデータ連携を加速するうえでの実装面での課題を抽出し、それに対応する解決策を取りまとめました。さらに、実証から得られた知見に基づいて、分野間のデータ連携に資する都市OS機能の一つとしてのCADDEの活用を、現在更新作業が進んでいるスマートシティ・リファレンスアーキテクチャ*7に対して提案しました。これら具体的な方策をもってデジタル田園都市国家構想の実現を支えるデータ連携基盤のさらなる発展を促進します。また、実証で得られた成果を新たに作成したCADDEの主要機能の外部仕様書などへ反映しており、本書を広く一般公開することでCADDEの普及と利活用拡大に寄与します。

1. CADDEについて

CADDEは、分野を超えてデータの発見と利用ができる仕組みとして、各分野のデータ基盤を横断して連携するための機能・サービス群で構成されています。NEDOが管理法人として運営を支援する内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期」で採択された「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」事業の一環で、日立、SBテクノロジー株式会社、国立大学法人東京大学、NEC、富士通株式会社、NII、株式会社NTTデータ、JIPテクノサイエンス株式会社が共同開発したものです*8。最新版のCADDE4.0は、SIP分野間データ連携基盤のWebサイトに掲載されているGitHubのWebサイト(プログラム共有サイト) *9でダウンロードが可能です。

2. CADDEを活用したフィールド実証の実施

本プロジェクトでは、分野間データ連携の社会実装を進めるため、CADDEの活用が想定される企業とともに、具体的な業態、業務、データの提供、データの利活用を想定した以下の4つの実証を2022年11月から2023年2月にかけてそれぞれ行いました。

1)産業・商業で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:ザイナス)
クラウド型調達・購買システムであるSAP Ariba Networkを活用し、中小企業のグローバルな調達案件への参入可否を検証することで、CADDEの社会実装に向けた課題を抽出しました。実証に参加したSAP Ariba Networkのユーザ企業からはCADDEのデータ連携機能に対する指摘はなく商取引へのCADDEの活用が可能であることを示しました。これにより、国内の調達・購買システム事業者、ECサイト事業者などがCADDEを自社システムへ実装していくことが期待されます。

2)オープンソースのデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:NEC)
札幌市のデータ連携基盤として利用されているFIWARE OrionとCADDEを相互運用しました。本実証では、不動産ディベロッパーや飲食店が、人流データ、気象データ、イベントデータなどの複数のデータを取得し、リアルタイムに可視化するアプリケーションからデータ活用の可否を検証することで、データ流通における課題を抽出しました。その結果、CADDEにおけるID管理の方法や、マーケティング・業務の最適化につながるデータの詳細化・多様化といった面で課題を確認しました。今後のデータ利活用の本格的な推進に向けて、データの質・量の両面での拡充が進むようデータ提供者側への働きかけも実施していきます。

3)データ取引で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:ESJ)
社会におけるデータの流動性を高めるため、データ利用権およびデータを取引の対象とするデータ利用権取引市場システム*10を開発し、実証を行いました。データは無体物であるとともに、一般的には法的な財産保護の対象にならないことから、本システムでは、データ利用に関わる権利の条件を標準化したデータ利用権証と対象データを組み合わせて取引します。データ利用権証により、信頼できる第三者機関(TTP)がデータを利用する権利の保証と、取引の関与者それぞれの真正性とデータの完全性を保証することで、安心・安全かつ効率的なデータ取引を支援します。本実証では、DATA-EX*11に参加するデータ提供者とデータ利用権取引市場に参加するデータブローカー間における、データ利用権取引市場への上場申請完了後の「データ提供者によるデータ生成」「データブローカーによるデータの受領」に該当するデータ収受にCADDEコネクタを利用し、データセットが適切なタイミングで遅滞なく、かつ真正性、完全性が保証された状態での収受の可否を検証しました。本実証にはPwCコンサルティング合同会社や株式会社MILIZEをはじめとする6社が参加し、実際に利用権証の生成、売買、利用権の行使が可能であることを確認するとともに、実証後のアンケートではすべての回答者が、本システムが現在のデータ取引における課題の解決に資すると回答しました。今後、本実証ではスコープ外とした機能の追加開発やUXの改善、電子署名技術を提供する事業者との連携により、可能性・有用性をさらに向上させ商用化を目指します。

4)スマートシティで利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:NEC)
実証1)~3)の複数分野のデータ連携基盤とスマートシティのデータ連携基盤をCADDEを介して接続し、相互連携したデータを用いたユースケースを三井住友海上火災保険株式会社とともに検証し、地域のスマートシティの現場を踏まえた技術的課題を抽出しました。具体的には、各実証環境にCKAN*12カタログサイトを配し、横断検索機能*13により検索取得したデータカタログを元にCADDEコネクタを用いてデータを収集、BIツールを用いて分析・可視化することで、保険商品の開発や保険のリスク判定へのデータ活用の可否を検証しました。CADDEにより複数分野のデータ連携が効率的に実施できることを確認したほか、事業者がデータ取引を出口とすることで新たにデータの提供側となることへの有意性も確認できました。今後、CADDEによる分野間データ連携の環境を提供し、事業者が自社の領域を超えた分野でのデータを入手・活用することが可能になれば、業務の効率化やデータ連携による新たな価値の創出につながるユースケースが拡がることが期待されます。

なお、実証に参加した企業・団体からのコメントは以下の通りです。

CADDEによる分野間データ連携についてデータ提供側・受領側両方のユースケース検証に参加させていただきましたが、特に受領側の立場において、保険引受に必要な基本情報の取得による業務効率化に資することを実感いたしました。今後、CADDEを介して他分野とのデータ取引が進むことで、保険料算出のための新しい要素の発見が進み、保険引受の高度化にも繋がりうると考えております。
三井住友海上火災保険株式会社 商品・サービス本部 火災傷害保険部・企業火災保険チーム長
井上 靖夫

本実証をもって、CADDEのデータ連携機能を活用することで、全世界800万社(2023年1月現在)が参加するSAP Business Network for Procurement(SAP Ariba Network)に連携できることが確認できました。これにより、CADDE実装の販売企業が、全世界の購入企業とつながることでビジネスを拡大していただけると期待します。
SAPジャパン株式会社 バイスプレジデント インテリジェントスペンド&ビジネスネットワーク事業本部長
牧野 仁

オープンソースのデータ基盤技術との相互接続性実証に参加させていただきましたが、CADDEにより様々なデータ連携基盤の相互接続が進み、地元企業が創出するサービスの域外展開が容易になる可能性を大いに感じました。札幌市としては今後、CADDEが普及することで、新たなイノベーションの創出とともに大きな経済循環をもたらすことを期待しつつ、スマートシティの実現に向けた取組を推進してまいります。
札幌市 デジタル戦略推進局 スマートシティ推進部長
渋谷 洋幸

3. CADDEの外部仕様書の作成、公開

CADDEの主要機能の外部仕様書を作成し、3月31日から公開しました(担当:日立、NII、NEC)。

本外部仕様書は、作成に当たって必要となる事項などの洗い出し・詳細化を行うとともに実証結果から反映すべき事項も整理したうえで、サービス要件や機能概要、API仕様などを取りまとめたものです。

本外部仕様書は、本実証で得られた成果を取り込み、CADDEの普及に係る企業・団体や、その依頼を受けてITシステムを整備するベンダ、契約管理等の各種CADDE支援サービスの提供者などに向けて広く参考となる情報を記載しており、CADDEの一層の普及促進に寄与します。

本外部仕様書は、SIP分野間データ連携基盤のWebサイトに掲載されているGitHubのWebサイト(プログラム共有サイト)からダウンロードが可能です。

4. 今後について

本実証を通じて得られた考察、課題、改善策などは、内閣府のスマートシティ・リファレンスアーキテクチャにも提案しており、地域におけるスマートシティを通じたCADDEの認知度の向上や利活用シーンの拡大が期待されます。

5者は今後も分野を超えたデータ連携基盤技術への貢献を加速することで、デジタルを活用した地域社会の課題解決・魅力向上や我が国産業の競争力強化を推進していきます。

本リリースの詳細は下記をご参照ください。
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/04/0407.html

日立製作所について

日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。金融・官公庁・自治体・通信向け IT サービスやお客さまの DX を支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、産業流通、水インフラ、ヘルスケア、家電・空調システム、計測分析システム、ビルシステムなどの幅広い領域でプロダクトをデジタルでつなぐ「コネクティブインダストリーズ」と、自動車・二輪車の分野で先進技術を提供する「オートモティブシステム」の事業体制のもと、IT や OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用する Lumada ソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。グリーン、デジタル、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。2021 年度(2022 年 3 月期)の連結売上収益は 10 兆 2,646 億円、2022 年 3 月末時点で連結子会社は 853 社、全世界で約 37 万人の従業員を擁しています。詳しくは、日立のウェブサイト( https://www.hitachi.co.jp/ )をご覧ください。

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